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特別養護老人ホーム花子  (東京都日野市)

栗田祥弘建築都市研究所

敷地は東京都日野市にある多摩平団地跡地の一角である。このエリアは「多摩平の森」と呼ばれ、緑豊かな公園や住宅などに近接する落ち着いたエリアである。このエリアは団地建設当初から生えている巨木が大切に残されており、特別養護老人ホーム花子の敷地にもこのエリアを象徴する巨大なしだれ桜が生えている。このしだれ桜を中心に「多摩平の森」の雰囲気を取り戻そうと考えた。

 

URや日野市とのデザイン調整の上で、西面道路側に8m~14.5m、南面緑道側に4mの緑地を確保する事とした。その緑地は施設利用者の高齢者や地域のみなさんの良き散歩コースになるように、既存の枝垂れ桜も含めて日野市の潜在自然植生を再現するように努めた。つまり日野市の植生の縮図となるよう配慮した。

 

この新しい多摩平の森の邪魔にならない様、建築のボリュームをできるだけ分割させて小さく見せ、外壁の色は森と同化するように建築の存在感を消すよう努めた。また建築も生物のように呼吸するというイメージから、緑の外壁の間のルーバー越しに建築内の空気の循環を呼吸のようにおこない、換気口や空調室外機をさりげなく配置している。また大木のように雨や強い日差しから人を守るように1階部分をセットバックし、2階以上を片持ち梁でせり出すよう工夫した。

 

内部空間は、1階に出入りの多い地域交流スペースやデイサービス、施設内託児所などの共用空間をまとめ、2~4階に要介護3以上の入居者が入るユニットケアを中心とした落ち着いた生活スペースをまとめて配置した。また今回のユニットケアの一部にメディカル特養として、介護サポートだけでなく医療サポートも付き、ケアステーションに看護士が常駐し、個室ベッド脇には吸引および酸素供給できるシステムを付け加えた。

 

ユニットケアの共同生活室は12室の個室に囲まれている。一般的な施設はいくら扉の数が多くても同じ単色や木柄の引き戸が連続することが多い。これでは一般の健常者でも自分がどの扉の個室で暮らしているのかが分からなくなることが起きてしまう。それが認知力が落ち始めた高齢利用者ではなおさらである。それが利用者の徘徊に繋がってしまうし、住宅というよりも病院のような施設を連想してしまう。そこでわざと大胆な柄や色の入った壁紙を選んで、個室の扉と個室内の一面のアクセントクロスとして使い、その人だけの柄を強く意識させるように配慮した。これは利用者だけでなくその家族のみなさんにも好意的に受け入れられている。

用途  : 特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター

敷地面積: 3,153.79㎡

建築面積: 1,635.81㎡

延床面積: 5,644.00㎡

Photo:ナカサアンドパートナーズ 守屋欣史

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